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「生きる」を問う
苦しみを歌う。
内に抱えた苦しみを外に吐き出すと、さらに苦しむことがある。
先が見えない不安。
恐れと怒り。
自分を襲う理不尽さを前に人は死を思う。
本当は生きたいのに。
顔をあげ、前を向いて歩きたいのに。
今日を耐えることに疲れた時、聞いてほしい。
ゴスペル、黒人奴隷の歌にルーツを持つ、魂の霊歌を。
そして、聞かせてほしい。
あなたの心を。
ここはキリスト教のラジオ局FEBCがあなたと共に「生きる」を問う場所です。
あなたの思い、お寄せください
あなたの心の中にある思い。
言葉にして初めて気づくことがあります。
ぜひ、お聞かせください。
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塩谷達也の「Spirit of Gospel」
暗い夜が来て何も見えない
かすかに聞こえる hold on
涙も枯れて途方に暮れた
言葉にならない hold on
hold on
hold on
Keep your hand on the plow hold on
苦しみの向こう祝福があるって
信じ続けよう hold on
右も左も閉ざされたなら
天を見上げよう Just hold on
hold on
hold on
Keep your hand on the plow hold on
#9
奴隷制度はゴスペルを語るときに絶対に外せない、一番源の部分です。前回お話した映画「それでも夜は明ける」でも、本当にその生々しい厳しさ、辛さが描かれていましたけど、このゴスペルの出発は奴隷制度なんですね。
この試練、困難、厳しさ、ここを体験する、ここを実際に生き抜いていくというところからしか、ゴスペルは生まれてこなかったと思っています。
そしてまた彼らにとって、励まし、慰めや希望を確信させるゴスペルがあったから生き抜いてこれて、そしてまた歌が生まれてきたと思うんですね。
放送は第11回・2014の番組の再放送です。
Deep river, my home is over Jordan,
Deep river, Lord, I want to cross over into campground.
Oh, don’t you want to go to that gospel feast
That promised land where all is peace?
#8
「12 years a slave」(邦題「それでも夜は明ける」)という実話を元にした映画があります。主人公はアメリカ北部に生まれ育った、奴隷ではない自由黒人。ところが拉致されて南部に連れていかれ、奴隷として働かされる。そして12年経って、自分が自由黒人だと証明でき、家族の許に帰るという壮絶な話なんです。
その映画にも出てくるんですけど、当時クリスチャンが奴隷制を支持してました。聖書の言葉を使って奴隷制を正当化する、そういう現実がありました。
今の僕らが彼らを批判するのはすごくイージーなことだと思います。でもその映画を見て僕は、自分の内側にある弱さと罪をすごく感じました。たとえ今、奴隷制がなくても、人を支配したり、この方が楽だ、効率的だ、そのために人を犠牲にする。そういう同じ罪の種、本当に僕らの中に大きくあるなと…。
そういう人間の罪の中で、この主人公は、家族と会いたい―これは愛の力だと思いますけれども、希望を持ちます。この愛の力しか、罪を克服することはできないんじゃないか…。イエス様はその愛の動機によって来てくださったんだ、そう思ったんです。
2014年の番組の再放送です。
Wade in the water
Wade in the water
Wade in the water, children
Wade in the water
God’s gonna trouble the water
See that host all dressed in white,
God’s a gonna trouble the water.
The leader looks like the Israelite,
God’s a gonna trouble the water.
#7
今日は「地下鉄道(underground rail road)」のことをお話したいと思います。これは黒人奴隷たちのアメリカ北部州やカナダへの逃亡を援助する秘密組織でした。この活動の中でも黒人霊歌は大きな役割を果たしたと言われています。
奴隷の苦しみ、それは僕らはもう想像するしかない、また想像しがたい…。その日常の苦難の中で、彼らが歌い、何を思って、そして神に希望を見出していったか。口で言うのは簡単なんですけども、この生活から逃れたい、解放されたい、すごくこう何とも言えないリアルな苦しみの中で生きていた彼らの複雑な思いというのがあったと思うんですね。
そういう中でこの「地下鉄道」は、食べ物や着る物を援助したり、北へ行く道を教えたり、さらには馬車やボートに乗せて次の場所まで護送もしたと言われています。まさに命がけで。
彼らは、奴隷主たちが追跡のために放った犬から逃亡奴隷たちを逃れさせるために川を渡らせた。その歩いて川の中に入っていくことを歌った「Wade in the Water」という歌を今日は聞いていただきます。
2014年の番組の再放送です。
Steal Away
Steal Away
Steal Away to Jesus
Steal Away
Steal Away home
I ain’t got long to stay here
#6
黒人奴隷たちは魂の解放と自由の希望を歌に託しました。そして実際の自由を得るために、歌は彼らの大切な武器になったと言われています。
例えば「Steal Away」という曲。これを誰かがハミングで歌い始めると、それを聞いた人がまた歌う、そうして遠く離れた畑までバトンを渡すように歌い継いでいく。これは、奴隷主に気づかれないように、夜中にハッシュハーバーで集まるぞと知らせるサインだったと伝えられています。
奴隷たちの中には北部に逃亡した人もいました。奴隷主たちは逃亡奴隷を追うのに犬を使うんですけど、犬は鼻が一回水に入ると効かなくなるんですね。だから奴隷たちは川に入った。まるで紅海を渡るイスラエルの民のように。その時に「Go Down Moses」という黒人霊歌を歌って、今晩川を渡って逃げるぞと、逃亡をヘルプしてくれる人たちに伝えたとも言われています。
僕は黒人霊歌がこういう現実の自由への歌だったと知って、だからこそ今、僕ら日本人にも、その強さ、濃さ、希求力が伝わるんじゃないかって思ったんです。
2014年の番組の再放送です。
Sometimes I feel like a motherless child
Sometimes I feel like a motherless child
Sometimes I feel like a motherless child
A long, long way from my home
A long, long way from my home
Sometimes I feel like I’m almost gone
Sometimes I feel like I’m almost gone
Sometimes I feel like I’m almost gone
We are up in the heavenly,
heavenly land
We are up in the heavenly of land,
true believer, a long way from home,
a long way from my home.
#5
今回からしばらくゴスペルの歴史に触れながら掘り下げていきたいと思います。
黒人霊歌は1730年代にそのルーツを持ち、18世紀半ばから後半にかけて歌われた黒人奴隷たちの歌と言われています。
彼らは1日の苦役を終えた後、仲間と秘密の場所で集まり、祈り、歌い、踊った。それは写真にも残っていないし、今となっては正確には把握できないのですが、「ハッシュハーバー」と呼ばれる奴隷たちの場所です。
見つかってはいけない、隠された教会。奴隷主に発見されれば刑罰が加えられる。それでも彼らは集まりました。
苦難の中で、隠された場所で、長い時間かけて、黒人霊歌は形作られていったんですね。
歌い、祈り、神に助けを求めて叫び、踊った。時には一晩中。
2014年の番組の再放送です。
これまでの放送
- #1 Nobody knows the trouble I’ve seen1
- #2 Nobody knows the trouble I’ve seen2
- #3 Everyday I Have The Blues
- #4 Plenty Good Room
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塩谷達也
ゴスペルシンガー、ソングライターとして、オリジナルゴスペルを歌い続けると共に、ゴスペルの「紹介者」としても活躍。ゴスペルクワイアの指導、著作活動、メディア出演など、その活動は多岐にわたる。現在、青山学院大学のコンテンポラリー礼拝においてワーシップディレクターを務め、学生賛美リーダーの育成に務めている。FEBCでは番組「Session―アートの中の彼の声」に出演中。
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